BlueMonday

シングルおやじはかく語りき

離婚したことを子供らになんて言って伝えたらいいのだろうか。

出張から帰ると、離婚届けが出されていた。

 

出張から帰ると僕はバツイチになっていた。

何度も妻に急かされたこともあって、離婚届は事前に僕が書いておいたものだった。

けれども、子供らの親権や養育権、いろいろと相談をして決めていかなきゃならないこともあったから、出張からもどったら、ゆっくり相談してから提出しようと、話し合っていたはずだった。

 

ところがどっこい。

 

僕が出張に出ている隙に、離婚届はものの見事に提出され、市役所に受理されてしまっていた。僕に相談もなく勝手に「婚氏続称」の手続きもされていたし。

出張前に離婚届を記載していた僕にも非があるかもしれないけれど、書いておくことで妻の離婚できないことへの苛立ちが、子供らへ向かうことが心配だったこともあって、基本的に離婚に対しては同意しているという気持ちを表したわけだ。

僕が離婚届を書いたことで妻が少しでも気が楽になって、子供らにも優しく接してくれるだろうという、そんな思惑だった。

 

たとえ離婚届けを書いてあったとしても、届け出するその意思がない場合は、無効になる場合もあるそうだが、先のことをしっかりと決めることもなく、勝手に届け出を出した妻に呆れてしまったこともあって、もうどうでもいいという気分になった。

 

しかも、妻は離婚しても出て行く先の準備も何もしていなかった。
普通は、その覚悟があれば、離婚後に自分が移り住む住居を探したり、いつでも出て行けるように衣類や道具を片付けたり、整理したりするだろう。
だって離婚届には離婚後の住所を記入する欄があるわけだしね。

そういうことの方が、離婚届を出すことよりも先じゃないのかなと僕は思っていたけど、妻にはそんな計画性も何もなかった。

 

妻にとっては、そんなことよりも、僕との「離婚」という事実が欲しかったのかも知れない。

赤の他人となってしまえば、自分の行動に対し何を詮索されることもないし、口実や言い訳を考えなくても自由に出掛けることができるわけだから。

 

そんなわけで、

 

出張から戻った僕は、戸籍上の父子家庭になっていた。

 

 

離婚を子供らにどう伝えたらよいものか、僕は悩んでいた。

 

離婚したときに、子供らにどういう風に伝えたらいいのだろう。
もちろん、初めての経験だから、どんな言葉で伝えたらいいのかわからない。
そのとき僕の子供らは長女が7歳長男が3歳だった。

子供らの心をを傷つけないように、けれども父と母が夫婦でなくなったことが理解できるようにと。そう考えると、上手い言葉なんて見当たるわけがない。

悩んでいる僕を尻目に別れた妻は、
「私が出ていったときに話せばいいんじゃない」
と、まるで人ごとのような態度しか見せなかった。

別れた妻には子供らのことよりも、もっと気になることがあるようだった。

離婚届けが受理されて赤の他人となった僕に気兼ねがなくなったのだろう、仕事から戻ると、子供らの世話や夕食の準備をすることもなく、着替えを済ませると、学校から戻っている長女に「遅くなるから」とだけ伝えて出掛けるようになった。

僕が仕事帰りに3歳の長男を幼稚園の延長保育から連れて帰る。
小学校に入ったばかりの長女は、学校の宿題をしながら、一人で僕の帰りを待っている。
そんな毎日だった。

 

別れた妻には、もう何の義理もなかった。いつ追い出してもよかった。

それでも、いまの状況でも子供らのために居てもらった方がいいのか、子供らにちゃんと父親と母親が夫婦でなくなってしまったことを話して、出て行ってもらった方がいいのか、果たしてどっちが子供らにとって最良の選択なのか、

僕は迷っていた。

 

出張から戻った僕は、実質的にも父子家庭になっていた。

 

離婚を切り出すときの気持ちって。

離婚を切り出された時の夫の反応は概ね決まっている。

離婚を切り出すときの妻の気持ちは分からないけれど、妻から突然「離婚して」と言われた時の夫の反応は、概ね、「なんで?」と思うらしい。
妻が離婚を決意したその気持ちを夫は理解できていないという。

 

僕も初めて妻から離婚話を切り出されたときは、妻の気持ちなんて理解できていないし、「なんで?」って反応だったと思う。

だって、僕は仕事もちゃんとやっていたし、給料もしっかり渡しているし、結婚してからは、家事も妻と分担制でやっていた。

育児にだってすこぶる協力してきたと思っていたんだ。

家庭第一主義を自負して、休みの日には一日中子供らの世話もしてきていた。

 

どこが不満なんだろう?

 

というのが率直な僕の気持ちだった。

ただ、その半年前から何となくその兆候は感じていた。

家族で出掛けるのを避けるようになったり、夜に一人出掛けてくることが多くなっっていたし、休日や土日になると休日勤務が組まれていると言って仕事に出ることが増えてきていた。

 

まさか、男?

 

そんな考えも脳裏を過らないことはなかったが、妻を疑うこと自体が失礼なことだと思い、家を空けることの多くなった妻に対し、気に留めないように意識していた。

 

「どうして離婚したいの?」

 

思い当たる理由がない僕は、妻に聞き返した。
そんな僕の問い掛けに対して妻は、

 

「別に、何となく」

 

妻のその返事は、僕を少し苛立たせた。
何となくで親が離婚したら、子供らはどうするんだよ。
僕は真っ先に片親を失う子供らの気持ちを考えたけれど、妻には子供らを思いやる気持ちが、その時にはもう既になかったのかも知れない。

 

妻が最初に「離婚したい」と切り出されたのは、たぶん僕と妻が実際に離婚する半年くらい前の出来事だったかもしれない。

 

その日から、

僕の父子家庭へのカウントダウンが始まった。

 

離婚という結果と父子家庭という道。

 

離婚するんじゃないだろうかと考えて結婚する人はどこにもいないだろう。

自分たちの幸せな将来、そして子どもが生まれ、その子どもたちの幸せな未来を望みながら夫婦生活を始めるはずだ。

 

間違いなく僕もそうだった。

まさか自分が離婚して父子家庭生活を送ることになるなんて、結婚するときにそんな未来は想像すらしていなかった。

どこかで狂った夫婦の歯車はなかなか矯正できず、

 

そして離婚という結果と父子家庭という道に僕を歩ませた。

 

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離婚という名の家庭崩壊は、ある日突然やってくる。

夫婦の3組に1組は離婚している?

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現在の日本は、夫婦の3組に1組は離婚する離婚大国だと言われている。

結びつき易く、離れやすい、そんな時代。

夫婦という結びつきが軽薄なものになり、離婚が意外に簡単なものになってきているのかも知れない。

 

この離婚の割合は、その年の婚姻件数を分母に離婚件数を分子において算出され、例えば、2017年の婚姻件数は60,6886件、離婚件数は212,262件(厚生労働省人口動態総覧の年次参照)となっていることから、その年の婚姻件数に対する離婚件数は34.98%となり、概ね3組に1組が離婚していると解されている。

但し、分母となる婚姻件数が2017年のみの件数であるのに対し、離婚件数は2017年だけではなく、その年よりも前に結婚した夫婦がこの年に離婚した場合も件数に含んでいることから、数字的に「夫婦の3組に1組が離婚する」という解釈がなされてしまうわけで、この割合だけをみてみると、周りがみんな離婚者だらけじゃないかと錯覚を起こしてしまう。

 

かくいう僕も、そんな1組の中に入っているわけだ。

 

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